ご挨拶

情報発信基地「NPOピュア」   NPOピュア 代表 藤田敦子

病気を患い障害をもった時、人は生きる選択を自ら選ぶことができるのでしょうか?人間として尊厳ある生活を送りたい、住みなれた地域の中で家族や友人に囲まれた生き方をしたい、そう誰もが願っています。  
でも、病気や障害は、ある日突然あなたを襲います。その時、医療、福祉、保健をになう人達は、あなたに最善の道を選ぶための情報を与えてくれるのでしょうか。

 
在宅ケア   
いままで日本では、家族の世話は家族がするものと思われていました。しかし、現在の家族には、老いや障害の介護をになうことはむずかしくなってきました。    
1970年代の高度成長期とともに、「核家族化」「家族崩壊」「老々介護」「社会的入院」「虐待」と新聞紙面をにぎわすたびに、「家族愛」こそがすべてを救う道のように言われています。    
あなたの周りを見てほしい。もし、あなたが倒れた時、あなたの家族だけで介護することは可能ですか?あなたがあてにしている配偶者も高齢者ではありませんか?嫁、娘は子どもの教育や生活費のため昼夜働いていませんか?    
そう、今の日本では家族だけの介護は幻想であり、「在宅ケア」「地域ケア」という社会や地域でささえていく機能こそがもとめられているのです。    
 
病院、施設からの脱皮   
治療がすんだ後も、介護者がいなかったり、ひとり暮らしなどの理由でそのまま入院している状態を「社会的入院」と言います。    
高齢者が多くなり、国の医療費も上昇しているため、4月から入院期間が長くなるに従い、病院への診療報酬入院基本料を減らし、3ヶ月以上の入院患者の自己負担額を増やす制度が導入されます。長期入院がむずかしくなり、転院先不足や、介護のむずかしい患者は、転院を敬遠されたりするでしょう。「病院のたらいまわし」が行なわれ、結果的に痴呆になったりします。    
施設を増やせばいいといっても、低成長期の今、膨大なお金を必要とする施設をたくさん作ることはむずかしい状況です。また、施設は、閉塞的で、個人のプライバシーや希望をかなえることがむずかしく、遠方にあるために家族や友人との交流が少なくなってしまいます。介護保険で公表されている施設の情報もごくわずかで施設ごとの料金の違いや方針などもよく確認しないとわかりません。    
障害者も施設で一生をおくることが一般的でしたが、国際的にも地域でともに暮らすことが普通であるという考えに変わってきています。    
 
新しい道   
ひとりの人が、在宅において限りなく主体的に自立して生活していくためには、物理的、精神的な環境を整備することが必要となってきます。    
介護保険がはじまり、ホームヘルパーはずいぶん知られるようになってきました。在宅医療、訪問リハビリ、福祉用具、住宅改善の利用はされていますか。宅老、グループリビング、グループホーム、介護付き住宅などは知っていますか。家族の負担を減らすレスパイト、ファミリーサポート、自己実現を可能にする移送サービス、精神的援助のための家族会や患者会、権利擁護や年金、生活保護の制度を活用していますか。地域で暮らすためには、まち全体を変える「地域ケア」も必要とされているでしょう。そのためには、行政との協働も大切になってきます。    
医療、福祉、保健とともに多くの人が関わってこそ、人間として尊厳ある生活を、住みなれたまちで、家族や友人に囲まれ、おくることができるのです。    
 
出会いから会設立へ   
「医療の中で生きていくものと、福祉で活動していく者とに共通するものは、それを受ける人の喜びを自らの喜びとしていくことにあると思います。人の本質は「善」。それを信じていくことが医療でも福祉でも必要なのではないでしょうか」そう語る服部義博医師との出会いが『ピュア』を誕生させました。『ピュア』という名も、私たちの純粋な思いが伝わってほしいという願いをこめ、市民の側から市民の立場での情報発信を行なう会として、発足させました。服部氏は、患者と対等な立場で患者主体の医療を行なっておられ、これからは、市民の体験や声を生かし協働していくことが、「在宅ケア」の発展に必要であると考えておられました。    
NPOピュアは、高齢者、子ども、障害者、がん・難病患者など在宅ケアを希望する市民に対し、医療、福祉、保健などの情報を提供することを主な目的としています。複雑化した困難な状態やひとり暮らしをどうささえるか問題も多く存在しております。市民や在宅ケアに取り組むあらゆる人々が手をたずさえ、情報を共有し、だれもが生きていけるそんな社会を夢みながら、『ピュア』は微力ながら力を尽くしてまいります。   (Pure[ピュア]は、純粋、清浄無垢の意)                         情報誌No.1 2002.3 掲載文より