赤ひげ先生21

高田典彦 医療法人社団共生会 高根町整形外科 院長 

在宅訪問診療の現状について

最初に私がなぜ在宅訪問診療に関わるようになったかについて話します。平成4年2月、千葉市若葉区にホスピス機能を兼ね備えた診療所を開設致しました。その前に勤務していた千葉県がんセンターでは、主として子どもの骨のがんと大人の骨転移がん(いわゆる末期がん)を治療していました。しかし、入院ベッドに限りがあり、すべての患者さんたちを最後まで看取ると、つぎのすぐに治療を必要とする新しい患者さんたちを入院治療することができません。このジレンマは現在もどこのがんセンターでも存在しているようです。そこで、もはや治療の対象とならない末期がんの患者さんたちには、別の施設や病院(ホスピス)に移っていただき、新しいすぐに治療を必要とする患者さんたちを入院せざるを得ないのが現状です。ここの時点で多くの患者さんたちとそのご家族にとっては、「いまさら移りたくない、今までの先生や看護婦たちから見放された」と感じてしまうことが多いのです。ここの問題は理性的に受け入れられることよりも、家族にとっては感情的に傷つき、なかなか理解されません。 このような経緯で、それでは自分でホスピスを開こうと考えて設立したのが現在の診療所です。

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最初は往診に行くような感じで必要に応じて行っていましたが、その後徐々に定期的に訪問を行うようになり、さらに訪問看護センターを開設してからは、本格的に在宅療養を支援するようになりました。現在、週に2〜3日在宅訪問を行っています。具体的には、火曜日と木曜日の午後と日曜日の午前を訪問日に当てています。  
ホスピスケアを行っていますと、入院治療と在宅訪問診療は、丁度車の両輪のごとく必要不可欠なものと考えられました。現在では、がん患者のみならず在宅診療の必要な患者さんたちに広く訪問診療を行っています。

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では、どんな患者さんたちが在宅訪問診療の対象になっているのか、私の経験から申し上げましょう。疾病別に見ますと、脳疾患後遺症での寝たきりの方が最も多く、重度のリウマチ、腰や関節の変形や痛みの強い方、心肺機能の低下した方、そして、在宅ホスピスケアの必要な末期がん患者さんたちです。パーキンソン病や筋萎縮性側牽硬化症などの難病の方も増えつづけています。  
訪問の回数については重症度によりますが、医師側としては週1回が原則です。重病の場合は、毎日になることもあります。訪問看護は週1〜3回が原則です。  
どの程度の距離まで訪問するのかと言う質問には、直線距離として25km以内、車で1時間  
以内とお答えしています。しかし、がん患者さんたちには在宅訪問してくれる医師が少ないため、もっと長距離の場合があることも現実です。訪問診療で私の専門外の患者さんたちを受け入れるかどうかについてはもちろん受け入れます。しかし、専門医からの紹介や依頼があってのことです。

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最後に今後の訪問診療、在宅医療の問題について述べましょう。一般的に在宅療養患者さんが増えることは予想されます。しかし、訪問診療したい医師は多くても、実際に訪問してくれる医師が増えることについては悲観的です。その理由として医師側から述べますと、(1)夜間や休日の対応が困難なこと(2)緊急時の収容先が確保されていないこと(3)専門外の分野の患者さんへの責任能力がないこと(4)遠距離の患者さんは敬遠するなどがあげられましょう。  
一方患者さん側からみますと、(1)発熱時や病状の急変時には何時でも見て欲しい(2)痛みや苦痛をとって欲しい(3)夜間や休日でも相談に乗ってほしい(4)医師のみならず訪問看護やヘルパーの派遣などすべてに対応してもらいたい(5)緊急時には入院処置などをしてほしいなどなどがあげられましょう。とくに末期がん患者さんの場合ですと病状が急変することが多く、家族の不安はいかばかりかと思います。ですからいつでもなんでも対応してくれるものと、訪問医師に期待してしまうものです。この両者のギャップは、なかなか埋められないでしょう。介護保険なら、ケアマネージャーがいます。医療側には、ケースワーカーや相談係がいるでしょう。あるいは、行政側の保健婦などにも相談できます。訪問看護婦も良い相談役になってくれます。そのような環境がありますので、あらかじめ良く検討し相談したうえで、在宅訪問診療を受け入れるかどうか、決められるのが最善でしょう。

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以上、個人的な経験からのみ述べましたが、在宅訪問診療をしたくてもできないという医師が多勢いることも事実です。また、在宅療養をしたいのだがどこに見てくれる医師がいるのか分らない、という家族も多いことと思います。要するに環境整備ができていないからでしょう。千葉県内ではそのような在宅訪問診療支援態勢を私的に作ろうとする動きがありますが、まだ確立していません。できるだけ早くそのような態勢ができることを期待してこの文章を終ります。とりあえずは、私の診療所のケースワーカーに連絡していただければ、相談に乗ってくれます。

医療機関名高根町整形外科
所在地千葉市若葉区高根町979−1           
(JR千葉駅バス成東行30分高根下車)
診療科目整形外科、リハビリテーション科
診療日・時間平日9:00〜12:00、15:00〜18:00(木午後は往診のみ)
連絡先TEL043-228-5331 FAX043-228-5650
在宅医高田典彦(60代)
対象患者がん(疼痛緩和ケア)
対象地域千葉市内中心、茂原市、東金市           
八街市、四街道市、八千代市等
24時間サポートあり
相談サポートあり(ケースワーカー)
訪問看護わかば訪問看護センター併設
入院・緊急時の病院連携有床19床 (うち緩和ケア11床)

(注)「在宅ホスピスケア希望」の方は、診療日・時間を守り、診療の妨げにならないようにご相談ください。